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第12話 は?

last update Dernière mise à jour: 2025-05-21 11:05:44

「じゃぁ、俺そろそろ帰るよ」

 パイプ式の椅子を引いて腰を上げようとした。

「ちょ、ちょっと待って!!」

 カレンに腕を掴まれてしまう。慣れない感触にビクッとして固まる。女の子に触られるなんて義妹の伊織に位しかないから。

「あ、ごめん。でも、まだ、座って」

 素直に腰を下ろしなおす俺。話しにくそうに下を向くカレン。少し見ない間に大人っぽくなったような気がする。やっぱりアイドルってかわいいんだなぁなんて考えてると。

「シンジ君ってさ、まだああいう事してるの?」

「へ?」

 突然の質問の意味が分からない。

「だから、私みたいになったコとか助けたりしてるの?」

――いやいやいや!何を言ってんですかねこの子は。あのときは仕方なく流されてああなっただけで、基本俺はああいうモノは苦手なんです!!

「そ、そんなわけないだろ。あの時はたまたまだよ」

「じゃあ、もう見えたりしてないの?」

「いや……念だけど見えてるよ。今も、たぶんこれからもね……」

 会議室内に少し重い空気がながれる。

 俺は確かに[霊]は見えるけど慣れているわけじゃない、そもそも好きになれる方がおかしいと思う。

「あの、協力してほしいことがあるんだけど……」

「やだ!!」

「なんでよぉ~!! 話聞いてよぉ~、ね、ちょ、待ってよぉぉ~!!」

 鞄を掴んでスタスタと歩き出す。はい話はお終い。じゃさいならぁ……。

「は、放せ!! 俺は帰る!!」

 鞄を掴んだカレンが俺に引きずられている。

――結構チカラあるなお前!!こら! その顔は反則だぞ!! おまえ、くっ、このっ、分かっててやってるな?

 少し泣きそうな顔で掴んだまま放そうとしない顔には「お願い」って表情を浮かべている。しかも薄く涙が滲んで。

「わかった、もう、わかったから放せ。いいか、話をきくだけだからな」

「やった!!」

 や
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